美山トレイルとは

美山トレイル構想とその背景

美山トレイル(仮称)は、南丹市の「美山町観光協会」が、 南丹市美山町を取り囲む山中とその周辺に計画している観光トレッキングコースをさします。

これとは別に、観光事業者の"やまや"が独自に企画した観光トレイル構想も"美山トレイル"と自称しています。
美山を取り巻く尾根には、八ヶ峰や頭巾山などの整備された登山コースがあります。 これらを尾根伝いにつないで、美山を一周したらおもしろいのではないかというのが発想の基点になったようです。 観光協会は先発の高島トレイルとも2013年頃から連絡を取りあって、運営方法の参考にしました。
ところが、芦生付近は丘のピークがよくわからない地形に加えて必ずしも尾根を歩くわけでない難解なルート。 杉尾峠から五波峠はアップダウンが激しい藪尾根。 品谷山から深見峠に至っては急峻でとても歩けない。 藪を切り裂いて道を整備したり、京都トレイル京北コースとの連携を図り一部迂回したり、コース選定は難航が予測されました。

トレイル構想に南丹市は参加していません。 行政が参加すると、登山道は行政による公式なものとなり、開通予定地の地権者に対する土地借用の責任だけでなく、 登山道の安全管理に全責任を持たねばならず、莫大な費用がかかります。

だから観光協会は、行政の予算補助無しでルートを開拓しなければなりませんでした。 苦肉の策として、地権者の了承を口頭でお願いして、自己責任で入らせてもらう程度なら出来るのではないかと、 ルートを決めて発表すれば、登山者が自らの責任で登山道を開拓してくれるのではないかと、期待したようです。

この美山トレイルが、京都大学芦生研究林、および、隣接する京都府立大学久多演習林の中を通る様に計画されていることが2014年5月24日に公になりました。 オレンジのテープを7~10mの間隔で木にくくり、 一部の木枝を伐採していることに、研究林職員と入林者とが気付いたのです。

京大芦生研究林はその1週前に観光協会より構想を知らされていました。 しかし芦生研究林は、研究・教育利用を前提として地権者から地上権を借りている土地ですから、 地権者の承諾無く観光目的で利用することは、貸借契約に反します。 それゆえ「観光トレイルには使用できない」ことを協会に伝えました。

観光協会は、調査だけしたいと申し入れたのですが、 調査を委託した事業者との連絡不備があったためか、無許可テープ設置と伐採をする結果的になりました。 また京都府大には何も知らされていませんでした。 6月24日、協議会が開かれ両大学は抗議し計画を白紙に戻すよう申し入れ、観光協会も謝罪を行いました。 トレイル構想は、現在のところ、協議継続となっています。 これらのことが、2014年6月以降順次インターネット上で知られることになりました。

さて、美山は2015年の国定公園化を前に揺れています。
観光協会も地域一帯から国定公園化をにらんだ観光産業振興策を期待され、 何らかのアクションを求められる。 しかし行政は、少人数で各所の調整に当たり手一杯で、外からは動きが遅く見える。 美山トレイルのやり方には賛同出来ませんが、国定公園化を機に何とかしたいという観光協会の切実な思いは理解できます。

美山トレイルの位置

美山トレイル(仮称)のルートは、美山町観光協会の要望により、非公開としています。 新規の登山道は整備されておらず、2013年~2014年頃に、調査のためのオレンジのテープを巻き付けただけです。 テープは調査目的であり、公式のルートを示すものではありません。また、テープの多くは風化脱落もしくは人為的に外されています。 ルートの安全の保証はなく、一部にはオーバーハングするような岩場など、一般入山には危険な場所があります。

なにより、地元地権者の了承をどうするかという、根本的な問題が、解決していません。 それゆえ観光協会でも、トレイルの整備方法について、まだ検討段階です。(2014/7/29現在)

完成した登山道があるかのような誤解を生じる恐れがありますので、このサイトの美山の地図上には掲載致しません。 必ずしも美山町境界尾根を行くとは限らないことだけお伝えします。

地権者の了承無くピークをつなぐ尾根筋を勝手に歩いたなら、生じた種々の事象の責任は、 歩いた本人が全て負うことになります。観光協会が正式発表するまで待ちましょう。

芦生・美山地区を登る注意事項

踏み跡を鹿に利用されないこと

美山周辺の山々には、地元の方が使っておられる地図にない登山ルートが色々あります。 しかしその多くは、野生鹿の侵入を防ぐ金網やネットにより、ルートが麓で遮断されています。 どの地域も、鹿の食害による農林業被害が深刻なのです。 一般に開放されているルート以外は、地元のかたの了承を得ないでネットを開けて登ってはなりません。

無許可で入林して作った踏み跡は、鹿の移動を容易にし、農業被害を次の里へと広げます。
登山者は、このことを理解して責任ある行動を心がけましょう。

GPSを過信しないこと

GPSが普及しました。しかし測定原理上、谷間での精度は低く、芦生の森の中では使い物になりません。 1/25,000地図上のプロットの方が正確です。 最新のガーミン社製オレゴン550でさえ、電源投入直後は400m近くずれることがあります。 芦生では、状況によって通常精度の10倍の誤差が出る場合があることを肝に銘じて使って下さい。 地図とコンパスと目視のみで行くことの出来るあなたの技量の範囲を踏み越えてはなりません。 2015年の5月のゴールデンウィークに高島市朽木生杉から芦生に入った男性1名がいまだに発見されていないのです。

※美山観光協会によると、”美山トレイル”という”地名+一般名詞”は商標登録出来ないのだそうです。 やまやのトレイル構想も、京大・府大の許可を受けていません。

参考:美山トレイルについての外部サイト一覧