公園計画書作成過程の問題点

個々の施設計画の問題点は、パブリックコメント例に記載しましたので、そちらを参照ください。 ここでは総体的な部分を記載します。

1:保護規制計画は航空写真を主たる情報源として作られた。現地調査は表面的。

自然の核心となる芦生原生林(芦生研究林)について、アクセス容易な部分しか現地調査を行わず、 奥地核心部分は航空写真による植生の推定を主たる情報源として保護規制計画を作っています。 そのため2km2を越える第1種相当原生林が、第3種または第2種特別地域となっています。 さらに現地調査不足のため、希少植物種の分布が、芦生地域の保護規制計画に反映されていません。

根拠/国定公園コンサルを受託した(株)環境総合テクノス(環総)担当者と話をした福本繁氏の証言。

「ある会合で環総から植生分布図や保護規制計画図を見せられましたが、原生林が第1種特別地域になっていなかったので、 『櫃倉谷とカヅラ谷の一部は原生林です。赤崎谷は二次林です。研究林ホームページの森林区分図の通りです。 私は歩いて全域確認しました。貴社は現地へ行って調査しましたか。』と聞きましたら、環総は『行っていません。 航空写真では赤崎谷は原生林に見えるので第1種にしました。』と答えました。 環総は会合で植生情報を求めていましたので、私が調査した希少種の分布報告を見せたところ 『これは労作ですね。弊社がすれば、かなりの費用がかかるでしょう。』と答えました。 後日、芦生全域の下層植生についての報告書を作るため環総が私のブログの写真を使いたいと言うので協力しました。」

根拠/京都府の「自然公園区域の新規指定調査業務委託仕様書」(H24.6.20、H25.5.8、H26.4.25、H27.6.22)

指定調査業務は、H24年度は環境総合テクノスが6,930,000円で、以降は同社京都支店がそれぞれ、 13,755,000円、14,040,000円、6,976,800円で受託しました。 環総は環境省植生図と京都府レッドデータブックを基礎資料としてH24に自然環境基本情報図を作り、公園計画図ver1を作成。 H24現地調査の仕様は「景観調査」です。 公園計画図ver2を作るためのH25現地景観調査の細目の中に「第1種、第2種特別地域の学術的根拠を示すために、 必要に応じて簡易な植生調査を行い」とありますが、「植生調査」の項目は4年間でこの時だけです。 この仕様では、ver1で第3種特別地域・普通地域と仮判定した地域は、たとえ原生林・希少種生育域であっても、 植生調査対象から外れ、第1種指定されることはありません。 そして利用情報を主体とするH26.9住民提供情報を取り入れ第1種第2種特別地域を減らし普通地域を増やしたものが H27.4説明会公開の「公園計画図ver3」であり、さらにH27の行政関係機関の修正を経たものが「府原案」すなわち パブリックコメント募集時公開の「環境省原案」です。

2:保護側の意見を聞く機会を、京都府が素案作成段階で一回も設けず。

根拠/H26.9京都府公開の、【国定公園指定に係る「施設利用計画」について】

住民フィードバックは、各区長に配付した「意見照会の書式」に基づき、各地域振興会を経由して情報を提供する形式で行われました。 ここで求めた情報は

  1. 「観光資源・見どころ」の情報
  2. 「地種区分」による「規制が現状とあっていない区域」の確認

のみです。観光情報の提供と、保護規制計画が開発の障碍になる懸念の有無についての確認とを求めています。

自然の状況、とくに保護の必要性については、情報提供を呼びかける項目自体がありません。 つまり、環境省原案は、文献情報と住民からの利用情報と地権者・行政調整とによって成立しています。 一般市民自然愛好家・保護団体・研究者が持つ自然保護に係る情報は、京都府へ提出する機会すら与えられず、全く反映されていません。

3:施設計画は、利用計画が存在せず、内容が白紙委任の状態。

施設計画が当該地の自然環境や利用状況を確認することなく机上資料をよりどころに定められています。 具体的な各施設の利用計画が存在せず、施設設置が環境にどのような影響を与えるかの検討もありません。 公園テーマの「里山景観」関連計画が歩道・園地51計画の1割に過ぎず、 多くは登山関連であることが交付金目当ての場所取り指定であること象徴します。 南丹市エコツーリズム協議会 が進める希少種保護に留意した自然登山道計画と、国定公園用一般向け遊歩道計画との棲分け協議も行っていません。 自然環境整備交付金取扱要領 第6頁別紙2が求める「不特定多数の者の用に供される」には自然の危険が多くて不適当な歩道計画などは可愛いもので、 隣県遊歩道との二重併走計画、ユーザーのつかない既存遊歩道への国費投入、 芦生研究林不正入林(無許可観光及び盗掘目的)拠点の整備、 国定公園の品格を損ねる「園地」「歩道」計画が混じっています。 「佐々里峠園地」、「小野村割岳登山線」、「八丁平園地」、「八丁平線」、「美山トレイル線の佐々里峠付近および八ヶ峰周辺部分」、 「品谷山・廃村八丁線の刑部渓部分」が、これらに該当します。

根拠/住民説明会での話。

H26.9住民説明会提案では13園地16歩道計画しかなく、京都府は「観光資源、見どころを教えてください」と住民に訴えました。 住民提供情報を元に計画を作り直したH27.4住民説明会では、「全部園地マークとして公園計画に載せました。 現時点で具体的な計画は何も考えていません。 公園計画書に載っているからと言ってすぐに実現するとは思わないでください。 調整の後、どういった計画が一番よいのか検討してから実行に移します。 ビジターセンターはどのように公園計画に位置づけるか未定で場所も4市町未調整ですので、今回は載せていません。」と説明しました。