京都丹波高原国定公園(仮称)の指定及び公園計画の決定に関する意見の募集(パブリックコメント)について(お知らせ)

環境省が美山の国定公園について平成27年10月23日付けでパブリックコメントを募集しました。

環境省発表の詳細は 環境省のサイトをご覧ください。 なお、現在、パブリックコメントの募集は締め切られています。

公開された資料を分析しましたところ、次の問題点が明らかになりました。

  • 第1種特別地域~第3種特別地域の区域分けが航空写真判定を元に定められていて、原生林が二次林と判定され第3種指定されているところや、 古い二次林が第1種指定されているところなど、現実とかい離する部分がある。
  • 行政境界と希少植物分布境界は一致しないのが常であるが、植物の実地調査が不十分で分布域を把握しておらず、 行政境界によって特別地域を設定した部分がある。
  • 公園整備計画でいう歩道とは「不特定多数の者がスニーカーでも歩ける安全な遊歩道」を指すにもかかわらず、 自然の危険性に対して利用者が責任を負う登山道とすべき危険の多い道が、整備計画に含まれている。
  • V字渓谷など、自然のもつ危険性が高いところほど自然環境も保たれている。 それゆえその場所は登山道のままにすべきであるのに、現場の状況の実態を確かめていないためか、 むりやり遊歩道化して、自然環境の破壊を行う結果になる場所が含まれる。
  • 単独施設は全部「園地」である。自然環境整備交付金では、博物展示施設、公衆便所施設、駐車場施設、休憩施設、 生態系回復施設も整備できるのに、それらが一つもない。
  • 「公園園地」は本来、その園地を使う者のために整備しなければならないにもかかわらず、 公園園地でない「京都大学芦生研究林」を利用する者の便を図るための施設を、研究林のすぐ外側に、「公園園地」として設置しようとしている。
  • 芦生研究林の無許可不正入林のための休憩所や駐車場所として機能している場所を、 京都府が不正入林の事実と事故を起こす危険性を認識しているにもかかわらず、正式に公園園地として整備しようとしている場所がある。
  • 福井県が整備した既存の遊歩道のすぐ10mほど横に平行して、新たな遊歩道を作る計画が含まれる。
  • すでに多数の遊歩道ルートがある名所(八丁平)の遊歩道ルートを改めて公園歩道にしようとしているが、 公園歩道に選んだ道はそのうち最も使えないルートである。あえてそのルートにした理由は、 最も使いやすいルートが自然環境保全法で保護された場所や滋賀県側にあり、交付金対象でないからである。
  • 歩道起点に行くための車道やトイレ施設が計画になく、その歩道の利用の便が考えられていないものがある。
  • 遊歩道の起点に公共交通機関も駐車場もなく、違法駐車利用を前提とした歩道利用計画が含まれる。
  • 以上のような問題を抱えているにもかかわらず、公園計画書に載ってしまうと、京都府が正式に取り下げる(公園計画を修正する)まで、 計画を全部実現しなければならない義務を京都府が負う。
  • 維持管理費は補助金対象でないので京都府が全部負担する。 その結果、京都府には公園施設とくに遊歩道の安全管理に今後ずっと莫大な費用を負担し続けなければならなくなる。
  • 公園施設で起きた人的事故の補償は施設管理者(地主)と京都府が負う。公園施設内では、利用者(登山客)は自然の危険に対する注意義務を負わなくて良い。 国は施設設置直後の事故以外は事故の責を負わなくてよい。 事故が起きればその歩道は閉鎖となり、京都府が公園施設計画の修正申請をしない限り登山道としても利用不可となる。
  • 公園計画の目玉は「里山」であり、公園計画書に【テーマを「森の京都~森・川・里に守り継ぐ自然と文化」とし・・・ 古くから都の人々の生活に密着した農村景観など・・・歴史と文化が織り成す様々な景観要素からなる風致景観を保全】とあるにもかかわらず、 登山道・園地の全51計画のうち、肝心の里山関連施設は平屋公園線、北園地、鶴ヶ丘園地、安掛園地、内久保園地の5つだけである。

京都府の担当職員は自然公園法に精通されていて、これほど多数の過ちを犯すとは考えられません。

ここで、平成26年9月5日付京都新聞で、 「今回の由良川・桂川上中流域(仮称)は、地元の要望に基づかない異例の国主導で候補地となった。」を思い出しました。 これは、ほんらい国費負担の「国」公園としなければならないところを、 京都府に建設費を半分以上負担させることの出来る「国」公園にしたことを意味します。 過大な費用負担を恐れる京都府を懐柔させるため、計画書取りまとめ段階では、意図的に「問題ない」と国が働きかけたのでしょうか。

それとも、実地調査をする時間も住民要望を精査・整理する時間も無く、住民要望を全部載せただけの見切り発車なのでしょうか。

いずれにせよ、京都府にはこれから多大な苦難が待ち受けます。

今後の想定例

  1. 登山道整備を含む計画を国が否定せず、そのまま公園計画書<案>が正式に採用される。
  2. 実際の整備段階で、国の基準を満たした施設でなければ認めないと、国の指導が入る。
  3. 環境省は自然環境に配慮した特殊工法を行える中央官庁御用達事業者仕様の事業計画をまとめさせる。
  4. 京都市・南丹市・京都府の事業者はゼネコンの下請けに甘んじる。
  5. 国は工事費を自然公園法施行令第4条に基づき、京都府や南丹市京都市に半分以上負担させる。
  6. 維持管理費や人件費は自然環境整備交付金の対象ではない。維持管理費および安全対策費は京都府が、全額永久に負担する。
  7. 人身事故が施設が老朽化したとき起きる。事故被害者補償の責は維持管理費を負担した京都府が負う。
  8. 過剰安全工事の結果、本来の自然は失われる。美山や北山には、どこにでもあるありきたりな道だけが残され、登山観光客は去る。
  9. そして最後に残った貴重な自然環境すら失われ、自然目当ての都心からのIターン移住者も来なくなり、ますます過疎化が進行する。

こうならないよう、公園計画書の事業化にあたっては、慎重に現地調査を行って欲しいと思います。

芦生地域(研究林内)については、国定公園計画の素案を作成するにあたって京都府が業務委託を行った大阪のコンサルタント会社が、 現地調査する時間も予算もなく、現地調査に代えて、有名サイトからサイト管理者公認で写真を公園計画書素案に転載するという、 「マンション杭打ち偽装」と同じ問題を抱えています。 また、平成26年美山住民説明会では、芦生研究林内の「伏状台杉」鑑賞目的にする計画が示され、 環境保護と危険防止の観点から京都大学が禁止している登山道計画と園地計画が盛り込まれ、今回もそれが再録されるというミスが犯されています。

最低限、これらが修正されることを望みます。

今回私は次のリンクのとおりパブリックコメントを提出しました。 これは、環境省へ平成27年11月27日付で送った文書から、個人情報や希少植物情報を抜き、当該図や写真を省いたものです。 自然環境に関する部分は、盗掘に悪用されないよう削除していますので、一部読みにくい場所があります。

なお、国定公園の件は平成27年11月11日付京都新聞 で「名称「京都丹波高原」に由良川・桂川上中流域の国定公園」と紹介されています。 まだ、名称も仮称段階で、美山トレイル線も確定したわけではありませんのに、すべて既定路線のように掲載するのはなぜでしょう。 H26年のような、鋭い批判眼を持った記事を、今後に期待したいと思います。

結果